飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その十五)

 俺は後ろについて階段を降りながら、彼女が「飲みたい」と言った時、なぜ簡単に了解したのか不思議だった。いかにも高投生がすねているようなこの女と酒を飲むイメージは結びつけ難い。俺はジンの空瓶を思った。あの多くの空き瓶を見なければ、この女と酒とは結びつかなかっただろう。
 少し暗くなった裏道を裸電球が照らしていた。俺も啓子のようにポケットに手を突っ込んで彼女の脇についていた。大学の角を左に曲がった時、彼女が声を出した。
「プレゼントを持って来たら誰もいない。うふふっ。きっと怒るわ。少し待っても来ない。きっと怒り出すわ。」
「大丈夫なの、本当に」
 俺は少し心配になって聞いた。
「大丈夫よ。だって私はいやなんだもの。私がいやなんだから、私が断わるのは当り前でしょう。彼女たちが来たとしても、多分来るでしょうけど、それは私の責任じゃないわよ。私は断わったんだから。」
 それはそうだが、相手を思いやれば俺には出来そうにない。自分の気持ちをこれほど押し通すことが出来るこの小さな女を俺は横に見た。
「何処がいい」
 彼女が聞いた。俺はコーヒーのセットと茶のセットを買いに行きたかったのだが、彼女の要求が違うことは俺にもわかっていた。しかし、俺は女連れで飲みに来たことはない。赤堤燈で、洋一達と飲んだりするだけだ。大勢では色々歩いたが、二人きりで会う場所など俺は知らなかった。
「何処でもいいよ。」
 俺は卑怯だとも思ったが、彼女に任せた。彼女は戸惑う様子もなく歩っていた。

 彼女は「スバル」と看板の出たスナックの前に来ると、歩を止めて俺の方を見た。俺がうなずくのを待ってドアを開けた。俺も後に続いた。奥に長い店であった。左手の止まりには六人の客がいた。
彼女は右手のピアノを背にしてほぼ中央の椅子に座わった。俺も座るのをほ見計らって、バーテンがお絞りをカウンターの中から手渡した。手渡しながら微笑んだ。
 俺は彼女を横に見た。彼女も頭を軽く下げた。俺にもお絞りがきた。俺は手を拭さながら彼女の仕種をそれとなく窺っていた。
「水割でいいでしょう。」
 彼女が聞いてきた。俺は黙ってうなずいた。彼女の前に水とボトルと氷が置かれた。グラスが俺と彼女の前に置かれた。バーテンが氷とウースキーを二つのグラスに注いだ。彼女がそれを追いかけるように水を足していった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/09(土) 18:17:18|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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