飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その十六)

 ボトルのラベルに「K」とあるのが眼に入った。
「入れて置くの。」                l
 俺が聞くと、彼女は言い訳でもするように言った。
「ううん、特別なの。期限なしという条件なの。めったに来ないし、来てもそんなにたくさん飲めないでしょう。だから私だけ特別に期限なしなの。」
 俺は煙草に火をつけた。どこかあどけない横顔、小さな身体が場違いの感を与える。が、ここはどうも彼女のよく来るスナックらしいのだ。
 俺は灰皿に吸い掛けの煙草を置いて、グラスに手をかけた。
「誕生日おめでとう。」
 取って付けたような言い方になってしまった。彼女はグラスを傾けて微笑んでくれた。俺はグラスに一口つけて置いた。火のついた煙草を灰皿から取って吸った。彼女のグラスは半分になっでいた。一気に飲んだのであろう。俺もグラスに口をつけて、少し余分に飲んだ。
 彼女は黙って俺の煙草から一本抜き出した。彼女が煙草をロに銜えると、バーテンが火を出した。
「ねえっ。私をどう思う。がっかりした。こんな飲んべいだって思っていた。」
 彼は煙を吐き出しながら言った。驚いたというのが正直なところだが、俺はそう言ってしまうことに躊躇した。
「別に。どうしてそんな事を聞くの。」
 俺はは平気を装って、そう言った。そして、彼女の部屋の花瓶にしているジンの瓶や、転がっていたジンの瓶を思い出していた。今の彼女の姿から、ようやく彼女の部屋のジンの瓶が感覚的にも納得できていた。
 それにしても、なぜ俺を飲みに誘ったのだろうか。彼女は今の姿を醜態だと言っている。それを俺の前に晒すことに向の得があるのだろうか。友達との約束を破ってまでこうしなければならなかったのだろうか。たとえ、その約束が嫌だったとしても……。
「ねえ、私あなたに一つだけ文句があるの。私を呼ぶ時に『啓子さん』なんて言ってほしくないの。ものすごく遠くに感じちゃうのよ。硬いのよ。もっと身近な呼び方してほしいの。ねえ、わかる。私の言っていること。」
 俺は戸惑っていた。平気な顔で装ってはいるが、どこまでうまく表情をつくっているかは定かではない。俺は大分あおっているらしい、が、そのせいばかりではないらしい。頭は冴えていた。
 知らぬ間に俺のピッチが随分上がっていたのだ。気付いてペースを落とすのだが、どうも彼女にあおられる。知らぬまにグラスが空になる。
 それにも増して、彼女は多い。そして、よくしゃべる。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/10(日) 07:33:50|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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