飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その十八)

 気がつくと、彼女が俺の背中を擦ってくれていた。しかし、その効果はなかった。それからも、液体の流出はとまらなかった。額からはあぶら汗が出ていた。吐き出した液体の臭いが、また嘔吐感を刺戟する。そして、また吐く。この繰り返しが、どの位続いただろう。
 ようやく吐き気が治まると、彼女が黙ってハンカチを手渡してくれた。ロを拭いて、自分のポケットに入れた。彼女が俺の肩と胴に手をまわして押さえてくれた。俺は電柱から手を放し、彼女に身を任せた。気分も大分落ち着いていた。彼女の小さな肩と細い腕を感じていた。その感じを味わいながら、彼女にもたれて眼をつぶった。彼女が支えながらゆっくり歩かせてくれた。

 どの位歩いたのだろうか。そして、あれからはどの位経ったのだろうか。そして、……。
 そして、何処からこの車に乗ったのだろうか。
 俺は車に揺られていることに気づいた。ぼんやりとした意識の中で、俺は推理した。眼はつぶったままだった。開くとまた嘔吐するような気がしたのだ。右側が心地良い暖かさであった。彼女にもたれていることは直ぐにわかった。暖かい安心と彼女の体温の中に俺の意哉は沈み込んでいった。

 意識が少し戻った時、俺は椅子に座り、台のようなものにもたれていた。自分の部屋ではない。彼女の部屋でもない。俺は頭を上げた。少し眼を開けてみた。白い割烹着を着けた男が前にいた。隣から啓子の声が聞こえた。俺はまたカウンターに顔を伏せた。眼をつぶった。彼女のフィアンセであろうことが想像できた。俺は沈み込んでいこうとする意識を押さえて、啓子を伺った。
「私の弟分よ。私が飲ませたのよ。ちょっと飲ませ過ぎちゃったのよ。」
 彼女は言い訳をしていたが、男は何も言わないようだった。彼女は例のふてくされたような、独り言のような口調だった。
 意識を無理に押さえたせいか、腹がもたついてきた。胸が焼けついたような酸っぱいような感じがした。吐くなと思った。俺は足元に気を付けながら立ら上がった。足のもたつきは治まったが、吐き気は容赦なかった。
「何処へ行くの」
 彼女の声が聞こえた。俺は答えずに戸口まで行った。彼女が俺の腕を掴むと、肩に載せてくれた。俺はそれを振りほどいた。戸を開けて外に出ると、回りの景色を見回した。幸いにも前にドブ川が流れていた。俺は急いでそこに行った。もう余裕はなかった。気が緩んだことも手伝ってか、ロから一気に液体がまた流れた。よくもこんなにも流れ出るものだと感心した。もう俺の腹の内容物は完全に空になっているとも思えるのに、どんどん出てくるのだった。周期的に何度も出てくる。
 俺は疲れて腰を降ろした。それからも二・三度吐きたい周期が来たが、それがどうやら治まった。俺はポケットからハンカチを出して口を拭いた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/12(火) 06:16:49|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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