飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その十九)

 一台の車がこの路地に入って来た。俺は車のライトが今の姿を映し出させる事が恥ずかしいと思った。その思いをばねにして、やっと立ち上がった。そして、「ラーメン」という黄色い看板の店の戸によろけながらたどりつくと、そこにしがみついていた。
 戸の曇ガラスに人の影が映り、戸が動いた。啓子が出て来た。
 車が、俺の前で止まった。タクシーであった。
「大丈夫。」
 と言いながら、店の中に俺を入れた。俺を椅子に座わらせると、外に出た。何やらタクシーの運転手と話しているようだった。
 俺は口の中が気持ち悪かった。口を漱ぎたいと思い、割烹着の男に水を注文した。男は黙って俺に水の注がれたコップをよこした。俺はそれを受け取って外に出た。口に含んで直ぐに吐き出した。口を三回漱ぐと、水はなくなった。彼女が来て、俺からコップを受け取った。それを店の中の男に手渡した。俺が黙ってそこに立っていると、彼女は直ぐ戻って来た。
 俺を抱えて、タクシーに乗せてくれた。彼女も俺の脇に乗った。気分は治まっていた。眼を閉じた。
「大丈夫。」
 彼女が声を掛けた。
「うん、大丈夫。」
 俺が答える時には、車はバックして路地から大通りに出たようであった。
「今の男、どう思った。……。駄目なのよね。結局、駄目なのよね。」
 彼女が突然話し出したが、俺は答えなかった。
「あなたは、私を見捨てるんでしょう。私を笑っているんでしょう。私ね、あんな男しか知らないのよ。」
 彼女は俺に言っているようなのだが、俺の頭は働いていなかった。聞き流していた。目をつむりながら、役女の声を聞いていた。
 そして意識がなくなっていた。
                                                             タクシーを降りた時、俺は自分の部屋に行くのではないことはわかった。そこが彼女の部屋であることがわかった。それほど、俺は回復していた。彼女に支えられながらも、充分に余裕を持っていた。部屋に入って、安心しきった感じがした。俺が横になっている間に、彼女が布団を敷いてくれたのも知っていた。彼女が抱えて、蒲団に運んでくれたのも知っていた。俺は彼女と二言・三言話をした。そのままここに寝ていて大丈夫だろうかとも思った。
 ここには洋子の友達の町子がいるはずだ。女だけのアパートに俺が泊まったとなれば、それだけで噂になるだろう。洋子の耳にも直ぐ入るだろう。なにしろ、町子はいつも洋子と一緒にいるのだから。 それどころか、洋子自身が、今このアパートにいるかも知れないのだ。そうは考えたが、起き上がらなかった。
 俺は眠りに入っていった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/13(水) 10:16:35|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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