飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その二十)

 眠りに入る瞬間、戸が閉まる音が深く大きく響いた。それほど大きな音のはずはないのに、ひどく俺の頭に響いた。心蔵のあたりに電気が通ったように感じられた。
 俺は重大な事を思い出していた。そして、音を聞く前を思い出そうとした。呼吸を整えようとして、思い当たった。息を吸った。その息が止まると同時に眠りに入っていたのだ。俺は眠りの実験に成功していたのだ。だが、そこからは意識がなくなっていた。

 喉が渇いて、眼が覚めた。黄色のカーテンを通して、光が入って来ていた。もう空は白んできているのだろう。あたりを見渡したが、水の用意がしてありそうもなかった。少しの間、我慢して眼を閉じていたが、もう耐えられそうもなかった。彼女は俺の脇に服を着たまま寝込んでいた。起きてくれそうにもなかった。俺は下の共同炊事場まで降りて行く事にした。
 起き上がると、蒲団がずれて彼女の肩が大きく出た。俺は静かに彼女に蒲団を掛け直してやった。戸を静かに開けた。廊下は無論、ひっそりとしていた。部屋の前の戸口に並んでいるスリッパだけが人の存在を感じさせていた。
 廊下に足を伸ばすと、板が軋んで、その軋みが響いた。顔を顰めてはみたが、どうすることもできない。階段に来るまでにも何度か軋む音が大きく響いた。それでもアパートはひっそりとしていた。階段まで来れば、ここの音はもうどの部屋にも聞こえない筈だ。俺は急ぎ足になって、それでも、できるだけは音を立てぬように用心しながら降りた。蛇口を捻って、口を付けて飲んだ。自分でも感心する感心するほど水が入っていった。
 このまま帰ろうかとも考えた。だが、一言も挨拶なく帰る事に躊躇して、戻ることにした。階段を昇り、廊下を忍び足に運んだ。幸いに誰とも象を合わせる事なく彼女の部屋の戸を開ける事が出来た。酔いが覚めているせいか、彼女の寝ている蒲団に潜り込む勇気がなくなっていた。俺は端に寄せられた炬燵台の前に座わって、煙草に火をつけた。灰皿が出ていて、そこには二本の吸い殻が入っていた。彼女が昨夜吸ったのだろう。二口も吸うともう飽きた。静けさが俺にのしかかって来るようであった。それに、足先と肩が冷えてきていた。俺は煙草の火を揉み消した。彼女の蒲団に潜り込むしかなかった。
 俺は恐る恐る潜り込んだ。そして、掛け蒲団の瑞を少し引張って、自分の方に持ってきた。彼女は少し動いたが、またそのまま寝てしまっていた。
 俺も目を瞑ることにした。肩から冷えが入ってきた。それでも蒲団をこれ以上引っ張るのは悪いと思った。彼女の方に身体を寄せた。彼女の背に手が触れたようだった。彼女も気付かないようであった。俺ももう少し眠ろうと思った。ため息をひとつして、心を落着けた。
 眠りに入ろうとした時、彼女が寝返りを打った。俺は意識を引き戻された。また、眠ろうと努力した。
 彼女が寝返りを打って仰になった。俺はまた眠りから引き戻された。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/14(木) 09:37:52|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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