飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その二十三)

「まあ、座われ」
 彼は素直に戸を閉めて、俺の言うことに従った。そして、しばらく本棚を眺め回していたが、思い出したのかのようにまた始まった。
「お前はエゴの固まりだ。」
 俺はゆっくりと彼に尋ねた。
「そう、俺はエゴの固まりさ。だけど、どうしてそういきり立っているのだ。」
「また、知らっぱくれて……。お前は一週間休んで何をやっていたんだ。大体お前のやっていることは女を不幸にしている。」
 いろいろ話をすることをつないでいくと、彼が啓子の事を言っていることがわかった。ラーメン屋のアルバイトの男は和夫の先輩なのだろうと想像できた。同好会か研究会かの先輩なのだろう。
 俺は平静を装って言った。
「先輩だの誰だのっていって、何の話なの……。兄貴の女に手を出すなとかいうことかねっ。」
 俺が煙草を取って火をつけると、彼も黙って俺の煙草を一本抜き取って、人差指と親指で吸い口を摘んだ。ロをとんがらせて、煙草に吸いついた。俺はマッチの火を差し出した。彼は素直に俺の差し出した火で煙草に火をつけた。そして、言った。
「何でお前はそういう言い方しか出来ないんだ。もっと真面目になれよ。一人の人を不幸にしている事位はわかっているんだろう。」
 俺には別段そういう意識はなかった。俺はふてくされたように言った。
「そうそう、俺は誰をも不幸にするのさ。皆が不幸のどん底に落ちっちまえばいいのさ。そこから這い上がった奴だけが生きていけるのさ。そして、俺には救世能力などないから黙って見ていればいいっていう訳さ。」
 どうも、彼と話をすると、調子が合わない。それでも合わせようとするから、互いにお題目の唱え合いのようになってしまう。相容れない宗教の信者同志の話し合いのようになってしまうのは毎度の事だ。 そのあげく、彼を茶化してしまっている。彼は真面目なので困る。
 面倒なときは、彼を怒らせてしまった方が話が簡単に終わっていい。だが、今日は少し早かったかも知れない。彼の顔色がもう変わってしまった。
 前にも早くから、からかい過ぎてしくじったことがあった。彼の興奮は度を越している。彼には信念があって、それを裏切られると想像もできないほど興奮する。それだけ純粋なのかも知れない。
 その彼によれば、俺は人に好かれ、出世するタイプなのだそうだ。世渡りがうまいという。言われてみると、そうかも知れない。表面ではそうではないように振舞ってはいるが、本当は俺にはその能力が優れているのかも知れないとも思ことがある。彼はそれを見抜いているのだ。そして、その見抜いた事をストレートに批判して俺に言うのだ。そういう彼を俺は嫌いではなかった。むしろ好意を持っているといってもよかった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/17(日) 08:47:43|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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