飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その二十五)

 今日はこれ以上怒らすことさえ面倒に思った。
 彼が少し落ち着くのを待って、機嫌を取った。
「お茶を飲むか、それともコーヒーが良いか。」
 俺は話をそらすために言ったのだが、彼は素直に答えたのだ。
「コーヒーがいいな。」
 俺は戸棚から、カップを二つ出した。インスタントコーヒーの瓶を握りながら、昨夜の事を思い出した。飲み代になってしまった金で、もしかすると、サイフォンのコーヒーが飲めるようになったかも知れない。ちょっと惜しいことをしたようにも思えたのだ。
 和夫は、ヤカンを持って立ちあがった。そして、廊下にあるガスコンロにかけてくれた。部屋に入るのを待って、俺はサイフォンとお茶の話を始めた。
「俺さ、サイフォンが欲しくて昨日出掛けたんだけれども、飲んじまってパーさ。それに、抹茶の道具も買う予定だったんだけれど、これも駄目さ。」
 俺は少し大袈裟な動作をつけて話した。すると、彼はこの事も気に入らないらしいのだ。全く疲れる。
「お前の考えは、ブルジョア的だ」
 彼はさう言うのだ。
 俺は反論した。
「お茶はもとはと言えば、貧民の薬だぜ。それに、抹茶の道具を持つて、不断の茶飲みに出て行く村だってあるんだ。観念的に茶は金持ちのする事と発想するお前こそ、そのお前の言うブルジョア的じゃないか。」
 彼の顔がまた引きつった。俺は、今回はこれ以上彼を興奮させたくなかったことを思い出した。彼に反応してイライラしている自分を落ち着けた。幸い彼は出て行く気配はなかった。
 俺はコーヒーの粉を二つのカップに入れた。
 窓から入る光が揺れだした。廊下の小さなヤカンから湯気が出ているのだろう。まもなく、湯の沸騰する音が聞えてきた。その間も、それからも、しはらく二人は黙ったままだった。
 和夫が立ち上がった。窓からの影が大きく映った。音が消えた。和夫がヤカンを持って部屋に入ってきた。
 立ったまま二つのカップに湯を注いだ。台にヤカンを置くと、座わって、「砂糖」と要求した。俺は砂糖の入った瓶を戸棚から出して、二つのカップに入れた。
 話が途切れて気まずいのだが、彼は帰る気配を見せなかった。二人は黙ってコーヒーを飲んだ。

 向かいの部屋の戸が開いて、俺の部屋がノックされた時、俺はほっとした。
「どうぞ」
 俺が言うと直ぐだった。戸が開いた。気まずい空気がそこから漏れていった。
 そして、そこには洋一が立っていた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/21(木) 08:05:25|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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