飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その二十七)

 俺がこう言うと、今までしかめっ面していたと思っていた和夫が、生き生きとした声を発していた。
「いいや、占いは当たる。人間は運命という法則があって、そのレールから外れる事はできない。なるようになるって言うのか、ともかく運命という考え方がある以上、統計を取れば当たる確立は大きいはずだ」
 彼がいつ表情を変えたのかは気が付かなかったが、今は穏やかな表情になっていた。
「考えようによってどうとも言えるな。」
 洋一がそう言ったのを切掛けにして、沈黙の時間が続いた。

 俺は、その沈黙の時間を埋めるように コーヒーをもう一杯飲む準備をした。和夫が黙って立ち上がり、ヤカンの湯を沸かし直しに行った。
「飲もうか」
 不意に洋一が言った。今日は酒を要求していなかった。ぐっすり眠りたかった。彼らと話している今でさえ、彼女の温もりが残っている。俺は一人でこのまま部屋に居たかった。
 けれども、俺は断われなかった。彼と一緒に飲まなければならぬ義務感みたいなものを感じていた。そんなものはないことは、理屈では分かるのだが、生来の性格のようなものが、俺にそういう義務感を課すのだ。しばらく考えた後ではあったが、俺は承諾の返事をしていた。それどころか、廊下から入って戻ってきた和夫をも誘っていた。
 幸い、和夫は断わってくれてほっとしたが、俺は今晩も飲み歩くはめになってしまっていた。

 コーヒーを飲み終わると、和夫は自分の部屋に戻っていった。
 彼の部屋からロシア民謡が流れてきた。
「しかし、よくも退屈しないで寝ていられたな。」
 洋一が言った。
「ずっと寝ていた訳じゃあないよ。時には街にも行ったし、ただ学校には行かなかっただけさ。どうってことないさ。」
 俺が答えると、洋一が深刻な顔をして言った。 ′
「洋子が心配していたぞ。……。おとといだったかな。うんそうだ。きのうはおまえがいなくて、話が出来なかったんだ。その前の日だからおとといだ。……。町子が風呂で洋子に会ったんだって言っていたんだった。その時にお前の話が出て、心配していたって言ってたぞ。」
 「そんなこと俺には関係ないよ。 誰が心配しようが、いちいちそんなことにかかわって、ご機嫌を取っていられないさ。」
 そういうと、洋一が少し不機嫌になった。
「そんな言い方はないだろう。少なくとも心配してもらえることに有難いとは思えよ。 俺だって気を使っていたんだ。一人にして置いてやった方がいいのか、顔を出してやった方がいいのか、いろいろ考えたんだ。それが、関係ないという一言で済まそうというのは気に入らない。……。結果的に、顔も出さない。だからか。だから関係ないのか。そういうものなのか。えっ、どうなんだよ。和夫だって本当は気をつかっていたようだぞ。それを、そんな言い方はないと思うぜ。」
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  1. 2009/05/28(木) 09:40:40|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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