飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

夜の長い街にて(その二十八)

 そうか、それでしばらく彼らは俺の部屋に姿を現わきなかったのか。俺は少し嬉しかった。が、それを素直に表情に出すことはできなかった。ましてや、言葉に出して感謝するなどというのは嫌だった。
「そうさ、君達の考えた通りだったと思うよ。ほっといてもらって有難かったよ。へたに気をつかって出入りされたんじゃあ、持たないぜ。」
「今日もか。」
 彼は一言だけ聞いた。俺は一瞬どきりとした。何と答えたらいいかと考えた。が、直ぐにここは素直に応えた方がいいと思った。
「いいや、今日は別さ。飲みたい気分になっている。」
 本当は、今夜ではなくて、体調が戻るのを待ってもらえればもっといいとは思っている。体力的にはもう飲みたくはない。その意味では嘘をついている。しかし、彼の、そして、周りの気通いには感謝している。その気持ちからすれは、本当に素直な返事ではあるのだ。同時に、本心で、気遣うことなく、素直に自分の気持ちを出して人と話をしたいようないい気分であった。
「ようし、そんなら、今日は飲むぞ。」
 洋一はそう言うと、自分の部屋に戻って行った。
 
 俺は向かいの部屋に向って声を掛けた。
「早くしろ、行っちゃうぞ。」
 俺は、精一杯声を張り上げていた。その調子はいつもの俺の声と変わりがなかった。返事はなかった。その代わり、ドタンと大きな音を立てて彼の部屋の戸が開いた。
「よお、行くぞ、早くしろ。」
 彼は、逆に俺を急ぎ立てた。
「待っていろ。ちょっと銭を探すから。……。」
 俺が慌ててあちこちの服から小銭をかき集めるのを、彼は煙草を吹かしながら悠々と見ていた。
「今日は暑いな。ビールでも飲もうか。駅前の紅葉ビルの屋上でまだやっているそうだぜ。……ビアガーデンが一番いいよ。安くて。」
 彼は戸にもたれながら言った。俺は何処でもよかった。
「ああ、いいな。」
とだけ返事した。
 俺も仕度が出来た。二人で外に出た。まだオリオンが東の空に拝むことが出来た。
「しかし、お前も良く寝ていたよな。この暑いのにさ、蒲団かぶって寝ていたのか。」
「ああっ。」
「何があったんだ」
「……。」
 俺が返事しないのは、もう分かっている。ただ、それを確かめるように間を置いた。
 返事がない事を確かめ終えると、洋一は話題をかえた。
スポンサーサイト

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/29(金) 11:33:14|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<夜の長い街にて(その二十九) | ホーム | 夜の長い街にて(その二十七)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://shin485.blog10.fc2.com/tb.php/32-caf8e45d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

タグそして検索

プロフィール

親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

最新記事

カテゴリ

2014年10月15日までの発信内容 (10)
庭に集まる虫 (1)
花壇の花々 (2)
話題考2014-9 (6)
2014年9月15日までの目次 (3)
【会津へ向かう途中の風景から】 (1)
福島のイベント情報 (1)
2010年までの目次 (166)
○ 夜の長い街にて(フィクション)  (30)
○ 福島の子規(ノンフィクション) (52)
話題考 (49)
日々雑感 (28)
小さな目と小さな声 (6)
日々雑感2014 (1)
2014 (1)
2014年11月15日までの発信 (0)

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。