飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その三)

 この起きあがるということすら抵抗があるのだが、立ち上がってしまえば、それまでの抵抗は何だったのかというほど薄らぐ。
 パジャマ姿のまま廊下に出る。階段を降り、下駄を履いて共同便所に入る。戻るとまた床に着く。そして、もう一本煙草に火をつけるが、起き立てに吸ったときよりいがらっぽさを感じる。

 昨夜、床に着いて、酒をラッパに飲んだ。そして、じつと睡魔の到来を待った。来迎を待つ人のように、じつと待った。睡魔がやってくるという警告の鐘は聞いた。ところが、俺は睡魔の姿は見なかった。睡魔が現われる前に、俺は意識を失っていたのだ。俺自身も睡魔に犯されていたのだ。意義が回復して気付いた時には、もう睡魔は姿を消していたのであった。
 俺は枕元に読み捨てて置いた雑誌に手を伸ばして、ページをめくった。もう一度試そうとも思ったが、もう昼である。諦めて、買い置きのインスタントラーメンを煮た。硬さをみるために、一本ずつ抜いて食うのだが、完全に柔らかくなるまでには、大分腹の中に入っていた。
 鍋のまま卓の上に持ってきて、鍋の中に箸を入れてそのまま食う。
 汁をすする時に鍋の縁の熟さが直接唇に伝わってくる。腹の中がもたつくが、起きて直ぐ食った時は何時でもそうだ。
食い終わると、床に寝転んで新聞を眺めた。面白そうな記事もない。床に横になったまま新聞を脇に置いた。
手を頭に組んでじっとしていた。ただ寝ているだけなのだが、不思議と心は充実している。心のどこかでいつでも感じている焦りも、退屈もない。一つの仕事に一句切りつけたという満足感があった。

 隣の部屋から鍵をガチャガチャといじる音が聞こえてきた。恐らく和夫が帰ってさたのであろう。しはらくすると、鍵が開いたのであろう。戸を引く音がした。そして、足音と振動が俺の頭に響く。一枚板で隔てられた俺と和夫の部屋は、互いに生活の音を共有している。荷物を置く音が響く。
 例のごとく、彼の題目を唱える声が聞こえてきた。彼はバラライカとヒットラーが好きなのだが、決まってヒットラーは敬意を込めて挨拶をする。そして、バラライカのレコードを掛ける。
「ハイル、ヒットラー」
 隣からの声で、彼がどんな格好をしているか想像できる。右手を斜め前方にまっすぐに出し、手の平を前に出している。背筋を伸ばして顎を引き、足を四十五度に開いている。右足をぴんと張りながら開き、そのままもう一度もう一方の足に付ける。その瞬間に、声を発するのである。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/04/21(火) 07:21:51|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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