飛翔

作品原案として書き連ねています。 書きかけで試行状態ですが、踏ん切りをつけるために、一度手を離すことを目的としています。

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夜の長い街にて(その四)

「ハイル、ヒットラー」
 そう叫んで、約五秒静止している。物音が聞こえない。まるで何事もなかったかと思える時間が過ぎる。
 それから、プレーヤーに載せてあるレコードに針を落とすのだ。
 音楽が流れると、ゆっくりと眠を閉じ、壁にもたれるのだが、その時に、俺の部屋の壁に彼の背中が当たる音を伝えてくる。
 どういう意図があってそうするのかは、俺には分からない。俺がこの部屋に越してきてから、ずっと彼のこの行為は続けられていた。しかも、レコードの曲は一度も変えられていない。バラライカとヒットラーとどう結びつくのかも俺にはわからない。
 俺はいつもこの事が神経に触わっていた。だが、今日はこの音にも苛立たない。それどころか、俺は耳を傾けていた。

 和夫は俺をよほどずるい人間だと思っているらしい。陰で言うのではなく、俺に直接そう思っていると伝えてくる。
 そうなのかもしれないと俺も思う。否定はしない。しかし、そう思っていると言いながら、彼は俺の部屋にはよく来る。そして、この俺に改心するように迫るのだ。俺にとっては改心しようにも何をどう改心するのかがさっぱりわからない。
 俺はつい彼をからかうことになってしまう。悪いと思いながらも、そうなってしまうのだ。彼は本気で怒る。俺は彼に殺されるかもしれないといった予感が働く。その位怒る。怒った勢いで戸を閉めて出ていく。俺は厳重に、鍵を掛ける。
 それでも、彼と話した後は、気分が良い。彼もそうらしいのだ。嫌いなのも許せないのも本気なのだが、それでも話をしたいということらしい。

 しかし、今日は嫌だ。いくら彼でも嫌なのだ。俺は音を出さずにじっとしていた。
 彼は、同じレコードを三度掛け直した。それから、何やら物音をたてて、戸がレールを往復する音がして、鍵をかける音がした。外に出たようだ。            
 俺はまた煙草に火をつけた。もう晩飯の買出しに行かねばならない。だが、このままでいたい気がした。外に出るのが今日は億劫であった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/04/22(水) 13:07:59|
  2. ○ 夜の長い街にて(フィクション) 
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親馬シン

Author:親馬シン
 原点であるフィクション「夜の長い街にて」を整理していく中で、自分が求めていたものの輪郭が明らかになると思っていた。
 しかし、実際にはそうはならなかった。

 今は、知りたいことを追い求め、何も考えずに書きとめるだけだ。それでも充分満足している自分を感じている。

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